1.協会の活動
NPO法人西表島エコツーリズム協会(以下、協会)は、西表島の自然や文化や歴史がいつまでも大切に保たれていくよう、皆で努力をしながら、そのすばらしさを島の人々にも、旅に訪れる方々にも伝えていくことがエコツーリズムの精神だと考え、自然や伝統文化を保全・継承するための活動をおこなっています。
協会の活動は多岐にわたり、以下の三つ以外にも、海岸清掃活動、リーフチェック活動、手業講習会、ガイド養成事業などの事業をおこなっています。
この冊子にはアンケートが挟み込まれています。地域住民が何に関心を持ち、何に問題意識を持っているのか把握するためのアンケートです。
来年度、協会では環境教育普及のために304回のワークショップの開催を計画しています。アンケートを返していただいた住民に声をかけ、集まった人たちでどのような内容のワークショップを開催すべきか考えることにしています。
この事業は、独立行政法人環境再生保全機構の平成22年度地球環境基金の助成を受け実施しています。
西表島は、手つかずの自然というイメージを持ち、人手の入った里地というイメージは薄いのではないでしょうか。しかし、文献で確認できるだけでも500年以上前から稲作を生業としてきた集落があり、そのような伝統的集落では、人間の生産活動にともなって維持されてきた里地の環境があります。この里地環境に、イリオモテボタルというホタルが生息しています。西表島・石垣島・小浜島のみに生息する八重山固有種です。西表島西部の祖納集落は、昔ながらの沖縄の集落景観を残し、イリオモテボタルの生息数も多い集落です。その祖納集落に里地調査サイトを設定し、現在、植物相調査・鳥類相調査・イリオモテボタル調査を実施しています。
イリオモテボタルの成虫の発生期は1201月となります。イリオモテボタル調査では、発生期にあわせて成虫の個体数調査をおこなっています。今年度は1月14日に、協会・(財)日本自然保護協会・祖納公民館の共催で、地域住民を交えて観察会の形式で調査をおこないました。観察会は、イリオモテボタルの発見者であり、発見以来、毎年イリオモテボタルの調査を実施されている大場信義先生(大場蛍研究所所長・元横須賀市自然人文博物館主任学芸員)による講演ののち、3グループに分かれて祖納集落を歩きながらイリオモテボタルを確認した地点と個体数を記録しました。調査が終わった後に、3グループの調査結果をまとめ、参加者全員で集落のどのような場所に多いのか、過去の調査記録と比較してどうなっているのか、保全していくためにはどうしたらよいのかなどを話し合いました。
植物相と鳥類相調査は、既に調査のスキルがある調査員が実施しています。
モニタリング調査は継続することに意義があります。里地調査には、地域に住んでいる人たちが、自分の地域の自然をモニタリングし、その価値を認識することで環境保全につなげていくという意味合いもあります。そのためには、地域の中で調査が継続できる仕組みを作る必要があります。現在のところ、祖納集落内で調査ができる人材に不足感があります。また100年継続を目標としているので、調査を継続するためには調査員の養成が必要となります。この仕組み作りはこれからの作業です。
現在、里地調査サイトは全国で約200カ所ありますが、沖縄県内の里地調査サイトは僅か2カ所しかありません。沖縄の伝統的な集落もエコツアーのフィールドとして重要です。伝統的な集落を保全するためにも、この里地調査は有効だと考えます。県内の里地調査サイトを増やすためにも、祖納サイトを軌道に乗せていきたいと考えています。